展示:『昔咄きりがみ桃太郎』

『昔咄きりがみ桃太郎』安野光雅/著 岩崎美術社/刊

「昔咄 きりがみ」シリーズは、「桃太郎」「舌切雀」「花咲爺」の三作があります。今回はその中の「桃太郎」を抜粋して展示しています。
この作品は安野氏が48歳のときにデザインを手掛け、実際に切り抜いたのは切り師が行ったといいます。一枚の紙を切り抜いているので、人物も背景も文字もつながっています。
白と黒の2色の世界は影絵を見るようで、不思議な雰囲気を醸し出しています。語りは安野流の独特の語り口調で、特に第(八)の場面では、桃太郎が鬼の中でも子どもや婦人や病人はいじめないようにと訓示をしていて、安野さんの優しさが伝わる桃太郎が描かれています。
また、この本は1000部限定の作品でシリアルナンバーがついています。ちなみに本学の蔵書は1000分の701番です。

【安野光雅について】
1926年、島根県津和野市生まれ。山口師範学校(現・山口大学教育学部)研究科修了。小学校教師を務めるかたわら、本の装丁やイラストなどを手がける。35歳のとき教師を辞し絵描きとして自立。42歳のとき刊行された『ふしぎなえ』(福音館書店)で絵本作家としてのデビュー。この作品は世界的な評価を受け、世界各国で翻訳される。美術のみならず、科学・数学・文学などにも造詣が深く、豊かな知識と想像力を駆使して独創的な作品を発表している。派手な色を使わず淡色の色調で細部まで書き込む。ボローニャ国際児童図書展グラフィック大賞や国際アンデルセン賞など数多くの賞を受賞している。

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